痴呆症の老人患者と向き合う薬剤師のわたし

救急車はありがたい存在です。
ですが老老夫婦にとって、大変な負のスパイラルを生んでしまうことがあります。

痴呆の症状が出始めた80歳の老人がある時、自宅のお風呂場で倒れました。
同い年程の妻は、救急車をすぐ呼びました。
そしてM病院に運ばれました。

しかし妻が言うには、病院ではこれといった病名が出ず、何で倒れたのかわからない、とのこと。
しかもM病院は入院が必要ないと判断して、その日に帰宅させてしまいました。
妻は「先生がそういうなら」と従いました。

ところが帰宅したその翌日、老人はまた倒れました。

妻はまた救急車を呼びました。
そうすると同じ救急隊員と顔を合わせました。
「M病院に連れていく」と隊員は言いました。
妻はさすがに「違う病院にして」と頼みます。
ですが隊員は「希望の所には運べない」「もし行きたいなら自分で行くように」と言いました。
隊員さんに悪気はなく、それがルールなのでしょう。
自分で連れていく事ができない妻は、妥協するしかありませんでした。

またM病院へ。
さすがのM病院、今度は一週間入院させました。

ですが、妻はまたもや原因がわからないまま、老人の退院をむかえます。
しかしまた数日後倒れます。
救急車を呼ぶと、また同じ救急隊員が…。
さすがの隊員もおかしいと思い、M病院ではなく、F病院へ運びました。
するとそこで、中程度の脳梗塞を発症していることがわかりました。
F病院から、老人夫婦の家族にも知らせが来ました。

いったい今までM病院は何を見ていたのだろうと、怒り浸透になる老人夫婦の家族。
M病院に問い合わせると「ちゃんと奥さんに伝えた」と言います。

つまり老人の妻には言っていた(ような)のです。
ここで発覚したのです。
老人の妻もまたボケが始まっていることを…。
先生の言葉を理解できていなかったのです。

M病院は責任回避をしたいようですが、家族には入院の知らせはくれませんでした。
老人の妻の方にも聞くと「心配させたくなかったから知らせなかった」と言います。
ようはF病院は、妻との意思疎通がままならない為、家族に連絡したわけなのです。

何度も倒れていた老人の症状はさらに悪化。
脳梗塞は乗り越えたものの、認知症を発症。
今では老人は、妻と娘の顔は認識できても、孫の顔や他人の判別はできなくなりました。

家族はもっと早くに言ってくれていたら、症状が進まなかったのではないかと悔やんでいます…。
そして、その妻も今では老人同様にボケが酷くなり、ヘルパー訪問が決定しました…。

わたし自身、薬剤師の職に就いているのですが、実はこの話はわたしの勤務する薬局に隣接するF病院で起こった出来事なのです。
この老人夫婦はよくこちらの薬局へも通っていたので、お2人のこともよく知っていました。
このような痴呆を煩った患者さんへの薬のご説明は、私自身、もっと気をつけなければと思い直した出来事でした。
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